第8便:  〜 私のゴルフ日記<生活編>〜



 期 日 : 2004年4月某日(日) 天気晴朗なれど風強し
 球 場 : 台北三田C.C. 日吉コース   
 メンバー: 今日のメンバーはいずれ劣らぬ台湾の強豪。
 同伴者のプロフィール 
    Y先生 :貿易会社(電気関係)を経営しているせいで時々痺れる。
          しかしマイナスをプラスに変える得意技の持主だ。
    L先生 :ダウンスウィングを嫌いアッパースウィング専門。天高く
          伸びる打球が得意。お聞きしたら投資会社経営者だった
    K先生 :マナーには厳しいが気配りはNO.1.ホテル経営者だ。
          ホールアウトと云わずチェックアウトと云う時もある。

私は短い最終パットを沈めた。アーノルドパーマーに勝ったのだ。大柄のパーマーが私の方に握手を求めて歩いてくる。私はしっかり握手をした。パーマーの手は以外に小さい。その瞬間目が覚めた。「夢か」。私は痛い程自分の両手を握り合わせていた。いけない。今日はゴルフの日だ。私は飛び起き急いで身支度をした。食事をとっている時間はなかった。私の先輩ゴルファーは、ゴルフの日の朝食は、決まって「うなぎ」を食べてくる。うなぎは精がつく食べ物とされているが、いいショットには体力が勝負と考えたか、うなぎ登りと考えたかは知らない。(台湾であれば朝食に漢方の「人参」を丸かじりしてくるようなものだ。)普段は全く少食の先輩なのに。「先輩、うなぎはそんなに早くは効きませんよ。」と云ってしまえばお終いになる。先輩なりに信ずるところがあるのだろう。ゴルファーとは思い込みの激しい人種だ。
しかし、何をするにも自分を信じ結果はともかく、この位の準備と時間の余裕を持ちたいものだ。私自身、朝からこんなに余裕のないことではY先生やL先生、ましてや飛ばし屋のK先生には勝てない。何はともあれ、これからゴルフの一日が始まろうとしているのだ。戦場に向う武将の気持なのだ。

車は淡水河に沿って球場に向けて進んだ。休日の朝のためか渋滞はない。集合時間が気になったがこの時間ならまず遅れることはないだろう。
ふと日本時代の友人のことが頭をかすめた。ゴルフ場に向かう途中スピード違反した友人は集合時間に遅れないよう一言の弁解もなく違反を認め、もたつく警察官を急がせ素早く確認書にサイン、余裕を持って集合時間に現れた。仕事でこれ程時間を守りテキパキ動く彼を見たことがなかった。ゴルフはかくも人格までも変えてしまう。 
若し今そのような事態に私がなったならばどうするだろうか。「警察官に紅包」なんて仮にも考えたら紳士のゴルファーとして失格です。よね。                

ゴルフに例えれば、本番中の空振りで、「ごめんなさい。見なかったことにしてね。」と同伴者にお許しを乞う正にあの状況と同じだ。そうこうしている内に車は目的地に到着した。 


クラブハウスには今日の仲間の顔があった。L先生がやってきた。「昨夜は飲みすぎてご前様ですよ。」(今日若し不調だったら飲み過ぎのせいだよ。と言わんばかりだ。)その後のことだが、練習グリーンでパットの練習をするL先生の足元は安定さを欠いていることを私は見逃さなかった。「L先生、今日は大きく握りましょう」と私。ゴルフ場は正に戦場である。いよいよコンペ開始。四名全員がティーグランド近くに集まった。この機に及んで言い訳は無用だ。                                      
しかしゴルファーとはなんと自己弁護が強い人種なのか。だから面白いのだが。

こんな川柳がある。                                

「全員が体調崩すコンペの日」              

力を出し切れぬうちに(いつもの力だよ。)18ホールがあっという間に終った。
入念にスコアーメイクの戦略を立て、パットが大切とばかりパターを新調して臨んだのだが結局、今日も散々なスコアーになってしまった。大たたきのホールが命取りとなってしまったのだ。(あれさえなければ。)コンペの後のビールだけが喉に爽やかだった。(ただの飲兵衛だけだよ。)家に着きドっと疲れが出た。ポケットからこぼれ落ちた皺くちゃのスコアーカードが恨めしい。今日はパットはことごとくカップに嫌われた。(本当は最初からラインを外れていたのに。)いやドライバーがフェードしすぎた。(冗談云っては困る。あれはフェードボールでなくスライス球だよ。)このドライバーやはり俺には合っていないのかもしれない。(腕のせいだよ。)150ヤードのショートホールで俺に5番アイアンを渡してきた今日のキャディーが気に入らない。俺は6番で充分届く距離なのに。(キャディーさんの目の方が正しいよ。) 悩んだ。  

悩んだがすぐ結論に到した。やはりクラブが悪かったのだ。ドライバーを買い換えよう。
今、皆がいいと云う「スリカソン」にしようか。流行の「テーローメード」にすべきか。
ゴルフショップに向かった。勧められるがままにスイング測定器で一振り。店員曰く「お客さん、お歳の割にヘッドスピードが高いですね。(お歳は余分だ。)だったら「HONMO」もお勧めですが、「マルセンTM300」が合っていますよ。「TM300」って台湾三田会の略語みたいなクラブだね。」店員曰く「いや、飛ばしてみたい300ヤード」の略ですよ。
「じゃそれでやってみるか。」(もともとクラブの理論など持ち合わせていないのだ。)内心これで次回のコンペはいけると思った。(練習もしないで直ぐにこう思えること自体ゴルフの天才か凡人か。)


家に持ちかえり居間で思い切り素振りをしてみた。確かな手応えを感じる。「危ないから家の中で振り回さないで下さい。」の妻の声。まあいい。これで次回は大丈夫だ。バックから古いドライバーを取り出し新品ドライバーに入れ替えようとした。「あれ、このクラブ私のでない。」「今日一緒にまわったY先生のクラブだ。」

かくして私のゴルフの一日が終わった。 

謝謝。Y先生、L先生、K先生。 とても楽しい一日でした。

<後記>

私の「ゴルフ・座右の銘」をご紹介したい。

−「 強いゴルファーである前によきゴルファーであれ 」

いい言葉だと思っている。しかし、この言葉が邪魔をして、私は当分強いゴルファーになれそうにない。
                         (昭和39年 商学部卒 飯沼昭治) ■