先月の「台湾語教育の現状について」でお話しましたように、台湾語は、2002年9月から全国の小中学校で教えられるようになりました。授業として取り上げられるにあたり、教材の選定や課程の設計という諸々の作業が急がれましたが、何と言っても一番急を要したことは、台湾語教師の募集でした。
                         台湾語教師にはどのような資格が必要か、どういった試験をすれば相応しい先生を選ぶことができるかということに、文部省は頭を悩ませました。 
                         
                         台湾の小中学校の教師というのは、殆どが師範大学を卒業した人です。しかし、教師が実際に台湾語を話せても、台湾語を1つの言語として教えられるという人は少ないと言えます。そこで、文部省は、台湾語教師を選定するにあたり、「国民中小学ビン南語教学支援人員検核考試」という要綱を発布しました。それは、下の表に示されたような、二回の検定試験をクリアするというものでした。 
                         
                        
 
                            
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   第一次試験  
                              (内容は各県市に委ねる) 
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        第二次試験 
                              (文部省が主催する統一試験) 
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   選考場所 
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   各県市はそれぞれの地方で必要な教員数の二倍の定員を選抜し、1月下旬までにその合格したメンバーリストを文部省に提出する。 
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   文部省が各県からの定員をもとに、3月に第二次の選考を行う。  
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   試験内容 
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   主に筆試で選考。 
  県市によっては、筆試合格者に試教(模擬教学)を実施する場合もある。 
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   1.筆試:発音表記、音韻学、翻訳 
  2.口試:唐詩の朗読、台湾歴史地理文芸、教育方法理念など 
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                        *追記:第二次試験合格した人は更に、師範大学で行う「36時間の台湾語教育講義」を履修して初めて、台湾語を教える資格を有することができる。 
                        このような選抜段階を経て、2002年6月に、約二千四百人(台北市450人、台中県168人、他)の台湾語教学支援者が選抜されました。試験競争が激しく、また試験内容が大変難しかったため、高学歴の者であっても、不合格してしまうほどでした。受験資格には、年齢や学歴の制限が無かったため、蓋をあけてみると、5、60歳以上の、台湾語が上手で学識も豊富な「台湾語実力者」が数多く合格していました。この難関な試験に挑んだ年配の人々は、仕事が欲しいという理由からではなく、「台湾文化の伝承」を自らの使命として、自己をこの仕事に捧げたいという強い意志をもっていました。  
                         台湾語教師は、このような試験を合格した人たちのほかに、現存の小中学校教師で、「師範大学での36時間の講義」を受講した人にも同等の免許が与えられました。それにより、教師採用の段階になって、各学校が台湾語の授業を校内の教員に優先的に振り分けようとしたため、多くの試験合格者(支援教師)が、不採用という事態になってしまいました。折角難関の試験に合格しても、実際に学校で採用されることがなかったため、今も、多くの人が、いつか学校で台湾語を教える日のために、自ら費用を払い、台湾語研修会などに参加し、台湾語教育の勉強を続けています。 
                        採用されていない台湾語支援教師がまだ残っている等の状況により、2003年は台湾語教師の選考が中止されました。一方、台湾語教育が始まって1年がたち、台湾語教師を引き受けた小中学校の教員も、その教育の難しさに音を上げる人たちが多くでてきました。台湾語教師の専門性がもっと重要視されてきたのです。 
                         
台湾語が話せない現在の子供に台湾の言葉や文化を教えることは決して簡単なことではありません。2年目を迎え、混乱した教育現場が批判を受けている現在、「すきこそものの上手になれ」−小中学校で教壇に立つという狭き門に入れなくとも、諦めず、引き続き台湾語教育に使命感を持ち、こつこつと力を蓄えている支援教師こそ台湾語教育の専門職であり、最もふさわしい台湾語の先生だといえるのではないでしょうか。また、現在子供たちの学業負担は増える一方ですが、台湾語は、ぜひ楽しい雰囲気の授業の中で自然に身に付けていって欲しいと願っています。 
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